Sustainble Coffee
サスティナブルコーヒーとは、サスティナブルな農業(持続可能な農業)によって生産されたコーヒーです。スペシャルティコーヒーは、環境に配慮したサスティナブルな農業により、生産されています。
サスティナブル(持続可能な)農業とは、生産物の価値に見合った適正な価格で農家に報酬を支払い、オーガニック製品にインセンティブを支払い、自然資源の管理を実践することに報酬を支払うことにより、これまでとは異なる市場機会を作る試みです。
サスティナブルコーヒーはスペシャルティコーヒーの中でも、さらに持続可能な営農によって栽培されたコーヒーにあてはめられています。これらは大きく分けて、オーガニックコーヒー、フェアトレードコーヒー、シェードツリーコーヒーで構成され、それぞれ有機無農薬、公正な交易、環境保護などが主な認証理念となっています。
SCAAのレポート(Sustainable Coffee Survey of the North American Specialty Coffee Industry July 2001 Daniele Giovannucci著)では、サスティナブルコーヒーを下記の通り定義しています。
・オーガニックコーヒーは、土壌を保全し、化学薬品の使用を禁じた手法で生産されている。
・フェアトレードコーヒーは、最低販売価格が保障された小農家からなる農協を通じて供給されている。
・シェードツリーコーヒーは、森林で覆われた土地で、多様な生態系の保全や渡り鳥の保護に配慮して生産されている。
これらのコーヒーは、それぞれの市場や認証基準によって定義されていますが、実際には、これらのカテゴリーの多くは重複しあって、複雑化しています。例えば、フェアトレードコーヒーはオーガニック農法で栽培されているところが多いのですが、それが認証基準となっているわけではありません。オーガニックコーヒーはシェードツリー農法で栽培されていることが多いのですが、それが認証条件ではありません。
コーヒーの生産は、世界経済の中で大きな役割を占めています。 熱帯地方の多くの農家や、コーヒーが外貨獲得のための貴重な資源となっている国々では、コーヒーの生産が主要な収入源となっています。
またコーヒーの生産は、動植物の生態系が多様な地域と一致しており、それらを絶滅させることも、保護することもできます。正しい状況を与えられれば、コーヒー生産は環境、経済の両面に利益を与えることができるのです。
しかしながら世界のコーヒー業界は危機に瀕しています。現在の流通価格は世界中の多くの地域での生産コストより低く、この流れが短期間で変わる見通しはほとんどありません。 大部分が貧困状態で暮らす小農家である世界中のコーヒー農家は、彼らの僅かな収入がさらに減少するのを経験しています。いくつかの国々では広大な熱帯雨林が、質の劣ったコーヒー生産、世界的な供給過剰、多様な生態系の損失といった問題を内包しながら、コーヒー畑に転換しています。慢性的な安値は、農家に良質の物の生産とその価値を守る事を、彼らの農地と自然資源を守る事を、そしてかれらの生活を維持することを困難にしています。この状況は世界規模での社会的、環境的な災害を引き起こす可能性があるのです。
この20年間、農家に適当な価格を支払い、オーガニック製品にインセンティブを支払い、自然資源の管理を実践することに報酬を支払うことにより、これまでとは異なる市場機会を作る試みである、サスティナブル・コーヒーの動きが現れてきました。これらの動きは、政策決定者、市場関係者、生産者と消費者の間での認識を深めさせてはいるものの、未だサスティナブル・コーヒーが世界に提供できるものと現実の世界のコーヒー市場との間には、大きな溝があります。生産者へ支払われる価格の継続的降下により、サスティナブル・コーヒー運動の発展は未完成です。
サスティナブルコーヒーの成長を促し、世界のコーヒー産業の環境保全問題に明確な基準を設け、協力して行動する機会として、Consumer's Choice Council は「コーヒー生産の自然保護原則」を整備しました。 Falls Brook Centre のPatrick Mallet はこの文書をConservation International、Rainforest Alliance、Smithsonian Migratory Bird Centerと協力して作り上げました。
(以下、「コーヒー生産の自然保護原則」より引用)
これらの原則は以下のいくつかのゴールを念頭に作られている。
本原則は、全世界のコーヒー生産地における農家、ミルに適用することを目的とし、またあらゆる自然保護関連認証プログラム策定における基本理念となる。加えて、本原則は産業規範や管理基準を策定する際、政府や公的機関がサステイナビリティー重視の政策へと修正する際、また技術援助プログラムを近代化させる際の基準となることを目的としている。
さらに本原則はコーヒーの品質こそがマーケット評価における最優先事項であることを明らかにし、消費者に対して品質の高い商品を提供するためにはコーヒーのどの流通ステージにおいても付加価値の強調説明が不可欠であることを言及するものである。
幾つかの場合において、この様な原則の適用には生産者・地方組合から政府までの団体間の協力が必要とされる。原則は、適用される地域の気候・環境的要素・伝統・文化等々に基づいて修正されるべきである。しかしながら、コーヒー生産システムの向上を目的としたプログラムは、少なくとも本原則に基づいて方向性を示し、随時その発展を監視・評価するべきであり、このことこそが真の自然保護の恩恵を確たるものにする。
コーヒー生産システムとその商業化は、生産者の社会的・経済的な暮らしを向上させ、地方共同体に経済的地位を提供するべきである。
コーヒー生産システムは農場とその周辺地域に生息する動植物の多様性と生態系機能を維持・拡大に貢献するべきである。
農場マネージメントを実行することで土壌侵食を防ぎ、土壌構成及び栄養分の維持・増加に寄与することができる。
コーヒー生産システムは、水の使用を最小限に抑え、水資源の汚染を防がなければならない。
コーヒー生産システムの全段階において、エネルギーは効率的に使われ、再生可能なエネルギー源を鋭意利用する。
廃棄物及びコーヒー副産物は、削減・再利用の原則に従って、周辺環境に与えるインパクトを最小限に管理されなければならない。
コーヒー生産システムは化学農薬・殺菌剤・除草剤・化学合成品の削減に努める。